社会的投資とは

WIAは経済性と社会性の双方を両立させる「社会的投資」(Social Investment)というアプローチを取ります。そして、その「投資」の対象として、社会起業家を支援していきます。我々は限られた資源を有効に使い、持続可能な事業を行うという意味で「投資」という言葉を使っています。

社会的投資は慈善行為にも成果を求める方がいいというシンプルな考え方です営利事業における投資行為の水準であれば、成果、リスク、そして費用や継続性の4つはすべて計画され、モニタリングされますが、これまでの慈善事業の水準ではそうではなかった。その結果として、社会的弱者が危険にさらされることや、資金の流用すら発生することがありました。我々はその状況を変えて行きたいと思っています。

社会的投資の登壇の背景ー慈善行為に求められた革新と行き過ぎた資本主義への反省

社会的投資は90年代の米国と英国を震源とし、世界各地で急速に影響を拡大しつつあるアプローチです。WIAは東日本大震災を機に日本の社会的投資の主要なプレイヤーの一社として挑戦を始めました。

「ソーシャル・ビジネス」が注目を集めるようになった時代は同時に、サブ・プライム・ローンを通じた多重債務問題が表面化し、社会に大きな打撃を与えた時代でした。行き過ぎた金融資本主義への反省と、同時期に慈善行為に対する内省や批判が生じ、慈善行為の「効果」に関する測定やその検証が行われるようになり、、限られた資源で、より大きな社会的成果を求める手法として「社会的投資」が登壇します。

WIAは震災復興における支援者との縁から、欧米の社会的投資と言われる分野の先駆者と出会うことができました。英国のインペタス基金(Impetus Trust)は、慈善の資金に関してその効果を求め始めた先駆者であり、欧州発の社会的投資のムーブメントの発信源になった組織です。同様に米国では、アキュメン財団(Acumen)とタイズ財団(TIDES Foundation)が牽引者として知られます。アキュメン財団は2001年の創業以来、92社のソーシャル・ビジネスへ約1億ドルの資金提供を通じて、5万8千人の雇用を産み、1億8900万にの生活の改善に貢献したといわれています。また、タイズ財団はこれまで約20億ドルの資金を800を越える組織、プロジェクトに提供しています。

この三者には共通する特徴は、支援先となるNPOやソーシャル・ビジネスの担い手たちに持続成長と経済的自立を求めることを前提とし、自らのプロフェッショナリティを重視し、そのうえで資金を提供していくという事です。

格差の拡大と社会的企業の主流化

世界の経済格差は近年急速に拡大しており、世界の資産保有額の上位62人の総資産は下位50%(36億人)の人々の総資産がと等しいという状況に至りました。絶対的な格差は経済の発展を疎外するのみならず、テロや汚染を通じて、社会の存続可能性そのものを揺るがしつつあります。

このような時代性を背景に各国で「社会起業家」(Social Entrepreneur)というアプローチが本格化します。深刻化する社会的課題に対し、それを事業の方法論を用いて、解決できないのか?という挑戦が立ち現れるようになりました。「社会起業」は先進国、途上国を問わず若者たちを中心に関心が高まり、「社会的企業の主流化」(OECD, 2009)というような指摘すらなされるようになりました。例えば、米国の代表的なソーシャル・ビジネスのひとつであるTeach for Americaは就職ランキングで全米トップを記録し、現在も最上位に名を重ね続けます。

各国の文脈によって制度や定義は異なるものの、貧困などの社会的な解決に対して、政府か企業かNGOかというこれまでの分断的な取り組み方法ではなく、その垣根を超えて横断的に再編し、さらにはその取り組みに当たっては事業としての継続性と拡大性を同時に重視していくというものです。そこから得られた知見やメソドロジーを広く社会に開示しつつ、社会の問題へのアプローチに利用してもらうことにも特徴があります。

ただし、社会の課題を事業を通じて解決していくソーシャル・ビジネスといえども、新しい事業やプロジェクトを立ち上げることには「産みの苦しみ」を迫られます。そして、ソーシャル・ビジネスが普及する中で、もう一つの課題が立ち現れます。成果を上げた事業に新たな資金が供給されない、ということでした。我々は成果を証明したプレイヤーにこそ積極的に資金が投じられるべきだと考えています